知恵を絞ることの価値

最近は、実験の日々を過ごしている。

そのせいもあり、土日が一瞬だ。

いや、日々が一瞬だ。

実験室、実験棟内は、完全遮蔽状態だから、全く外の風景がない。

そのせいで時間感覚がないのだ。

気づいたら一日が終わっている。

その分集中できているということでもあるわけだが。

 

実験といっても、先週までは準備で、

本番の実験は今週からになる。

 

先週は、僕なりに知恵を絞った。

レーザー駆動イオン加速の研究をしているのだが、

高強度レーザーの実験だから、

レーザーをμmスケールに集光させる。

 

その集光位置付近にターゲットを設置して、イオン加速する。

 

そのための計測器が大事なわけだが、

計測器は、全て、その集合位置を基準に持ってくる必要がある。

 

そのための作業をアライメントと呼ぶ。

a line ment

と分解すればわかりよい。

つまり、計測器to集光点を一直線(a line)で結ぶ。

 

その作業を僕はあんまりやってこなかった(先輩が勝手にやってくれていた)ため、

その作業に苦手意識を持っていた。

 

なにしろ、その作業は、

要領をつかめないと、

ひたすら上手く行かない。

 

とにかく、なかなか大変な作業なのである!

その大変な作業を後輩と2人でやっていたのが先週だった。

 

めっちゃ大変だったが、

僕なりに知恵を尽くして、

なんとか、アライメントできた!

 

それがなんとも言えず嬉しかったが、

次の日、先生にアライメントした検出器を取り外されてしまったのである。

あんなに大変な思いをしたのに!

しかも、別の位置に、爆速でアライメントされてしまった。

 

それで、なかなかのスネ具合だったわけだが、

思えば、万物は流転する。

諸行無常。盛者必衰。

ただ春の夜の夢の如し。

そうだ。作り上げたもの、それ自体より、

知恵を絞り尽くして、

最善を尽くしたその姿勢、

その生き様、

その手触りの生の実感のほうが、

はるかに価値があるのだ。

 

わざわざ

挑戦しなくても済んだかもしれない。

予定調和的には、

無理しなくてもよかったかもしれない。

結果的には無駄になったかもしれない。

それでも知恵を絞る、

知恵を絞り尽くして、

自分なりの限界突破には、

計り知れない価値がある

と僕は信じている。

 

知恵っていうのは、絞るものだ。

今までの人生、今までの過去の集積から、新しく生み出す。

生み出す行為っていうのは、なかなか苦しいものだ。大変なものだ。

だからこそ価値がある。

 

結果だけで見れば、

知恵者の知恵を借りれば早く済む。

でも、あえて、背伸びして、

知恵を絞り尽くしてみるのも、

それはそれで大切なことだと思う。

 

何より、限界状況で、知恵を絞って乗り越える男は時代を問わずかっこいい。

そういう男になりたいと強く思っている。

その一歩を先週は歩めた気がしている。

というだけですわい。