【書評】静かな人の戦略書

いい本を読んだので、共有しておく。

その本が、こちら

 

「あー。そういう本ね。

結局、HSPとか内向的な人を慰めているだけでしょ?」

と思った方にこそ、読んでいただきたい。

 

というのも、僕も手に取ったときにそう思ったからだ。

こういう類いの本は何冊か読んでいるが、

読者(内向的な人)に慰めを与えているだけで、

なんの解決策にもなっていないような駄作が多かったのだ。

(お金を無駄にした)

 

しかし、この本は違う!

 

HSPは、こういう仕事に向いていて、こういう才能があるんです!」

みたいな無駄な情報ではなく、

もっと普遍的なことが書かれている。

 

 

この本の目的は、

内向的とか外交的とか関係なく、

他者理解をすること(もしくは自己理解)と、

成長していくための具体的な方法論を学ぶことである。

 

実際にこう書いてある。

 

「私が○○なのは、内向型だから」

とか

「私は内向型だから☓☓できない」

などと、

内向型をひと括りにして決めつける発言は、

危険なだけでなく、

みずからの成長の可能性を著しく狭めてしまうことになる。

なんと言っても、

本書の最大の目的は、

内向型の人たちが自分自身をよく理解し、

仕事で成功するために、

自分ならではの方法を見つけるお手伝いをすることなのだ。

85ページより引用

 

この本はよくある慰め本とは違って、

騒がしい社会で静かな人がとるべき具体的な戦略について書かれている。(しかもエピソードベースでわかりやすい)

内向的であることに言い訳もせず、悲観もせず、単にそれを認め、

それに対してどうすべきか、ということにフォーカスされている。

 

ものすごく前向きな本だった。

 

更に良いのは、

読者に忖度せず、言い切っているところ。

断言しているのが良い。

例えば、この一節。

ここでまず、はっきりさせておこう。

あなたや私だけにぴったりの仕事なんてものは、存在しない。

誰もがどうにかして自分の強みを見出し、

それを生かして生計を立てようとする。

言い換えれば、重要なのは、自分がもっとも価値を生み出せる仕事を見つけることであり、

それは必ずしも、いちばんやりやすい仕事とは限らない。

95ページより引用

いわゆる「天職」なんていうものはない!

と言い切っている。

著者が自分のスタンスを明確に示している。

これが良いところ。

 

「あれもいいし、これもいい。

結局、なにもかも相対的なもので、

グラデーションで変わっていくんです!」

みたいな相対主義的で、立場が明確ではない本には読む価値がない。(そもそもそんな本は売れもしないが)

 

相対主義者は自分の立場を明確にする勇気がない怠け者であり、

そんな本は読むだけ無駄であるというのが僕の持論。

 

 

 

 

話を戻すが、

この本はものすごく現実的だと思う。

 

なんでこんなに現実的なのか?と考えてみると、

著者自身が身を以て体感してきたことを体系的にまとめた本であるからだと思う。

そして、著者自身はおそらくかなりの読書家だ。

なぜなら、この本の中ではたくさん引用がされているから。

 

1個の良いプレゼンをするには、

その背後に100個くらいの準備が必要であり、

1冊の良い本を書くには、

その背後には100冊くらいは準備が必要なのではないかと思う。

 

アウトプットというのは、

100の準備の上に成り立つ上澄みの1のことであり、

本書はまさに上澄みの贅沢な一滴が凝縮されている。

 

本の内容を引用できるということは、

その本を熟読しているからであり、

そこから得た学びを自らの身を以て実践してきたからこそである。

 

この本は、間違いなく名著の類いだと確信する。

それくらい僕には役立つ内容だったし、

手にとって全く損はない。

 

外向的であろうが、内向的であろうが、

本書を読むことには価値がある。

 

ぜひ書店で手にとってみてほしい。

 

ps.

最近のビジネス書は二極化している。

うすっぺらいテクニック集と、

エリート向けの分厚い良書に。

(もちろん本書は後者)

 

得てして、翻訳本は分厚い良書で、

日本人が書いた本は薄っぺらい。

なんでだろうね。