親の期待に応えられない後ろめたさ (村上春樹「猫を棄てる」を読んだ感想)

 

親の期待に応えられないっていうのは、

子供にとってかなり大きな心の重しになるような気がする。

村上春樹氏の新刊が出たから読んだ。

エッセイなのだけれど、やはり文体は村上春樹で、

穏やかなその波長は気持ちも穏やかにしてくれる。

 

村上春樹氏が猫を棄てるの中で語っているのは、

父親のこと。

村上春樹氏も父親がいて、母親がいて、

ちゃんと人の子なのだなと思った(当たり前なのだけれど)

村上春樹氏くらいすごい人、成功している人、

有名な人、才能あふれる人、というのは、

いくらか超人的で、人間っぽくない。

 

だから、凡人からは遠い存在なのだと感じられてしまう。

でも、人間である限り、父親、母親はいるし、

親子関係でいざこざがないわけではない。

 

そういう超人にも、人並みに親子問題は抱えているのだなと親近感がわいた。

 

村上春樹氏は、父親の期待には応えられなかったらしい。

子供の一般的な願望は、親の期待に応えたい!だと思う。

でも、それができる場合もあれば、できない場合もある。

僕はできなかったし、

村上春樹氏と似た後ろめたさを感じることはあった。

 

僕は今でも、この今に至っても、自分が父をずっと落胆させてきた、その期待を裏切ってきた、という気持ちをーーーあるいはその残滓のようなものをーーー抱き続けている。

猫を棄てる 72ページより

やっぱり村上春樹の文体は良い。

すごく良い。

 

自分の中に澱になっていた感情をろ過してくれるような気がする。

 

「猫を棄てる」を読みながら、

自分の親との関係性を考えるのも悪くないと思う。

 

 

良い一日を!