最近、おもしろそうだなと思って買ったのが、
「はじめてのウィトゲンシュタイン」
ウィトゲンシュタインと言えば、
論理哲学論考の著者であり、
語りえぬものについては沈黙せねばならない。
という名言でもよく知られています。
いかにも賢そうな感じの顔つきで、
眼光の鋭さも感じますね。
彼の生い立ちから、論理哲学論考を著するまでの経歴について、
この本の第一章に書かれているんだけれど、
まあ、すごい経歴だなと思わざるを得ない感じ。
まず、生まれた家がめっちゃ特殊で、
鉄鋼関係の実業家として、財を成していた家系に生まれる。
彼の家はオーストリアで有数の大豪邸として知られていて、
途方もない財と豊かな芸術に触れて育ったらしい。
ちなみに、その家は、ウィトゲンシュタイン宮殿という名前になっているらしい。
いや、宮殿ってどんなでかさやねん、って突っ込まずにはいられない。
そんな感じで、めちゃくちゃ裕福な環境に生まれたのがウィトゲンシュタインだったということです。
驚かされるのは、彼は工学部の出身だということです。
高層気流の研究をしたり、プロペラの設計をしたりするのが好きだったようで、
工学から数学に興味が移り、数学から論理学に興味が移り、
そして論理学から言語哲学へと興味が移り変わっていって、
最終的に哲学者になっていったらしいです。
ここまで読んでみた読者は、
ウィトゲンシュタインは、さぞかし裕福で恵まれていて、教育もめっちゃちゃんと受けることができて、っていうそんな環境だったから論理哲学論考をかけたんやろ。
って思ってしまったかもしれないですが、
実は、論理哲学論考は、戦争の塹壕の中で紡がれた考えだったらしいのです。
第一次世界大戦が勃発し、
生まれがオーストリアのウィトゲンシュタインは、
戦争に巻き込まれます。
ご存じの通り、第一次世界大戦の勃発の火種となったのは、
サラエボ事件であり、この事件で暗殺されたのが、オーストリアの皇太子でした。
まあ、祖国の皇太子が暗殺されて、国民が黙っているわけもなく、
ウィトゲンシュタインも戦線に駆り出されるわけです。
またまた驚かされるのは、ウィトゲンシュタインは志願兵だったということ。
そして、自ら最前線の戦線に立つのです。
彼は、サーチライトで敵を照らしたりするような役目を担っていたようで、
言ってしまえば、敵の的になるような役目をわざわざ買って出ていたらしいのです。
そして、論理哲学論考は、この大戦のさなかに構想され執筆されているというのです。
最近、僕はゴジラー1.0を見に行ったんですが、
あの映画を見たあとだからこそ、戦争って本当に悲惨だな、というのを感じていて、
そんな極限状態の中で、ウィトゲンシュタインは思想を紡いでいたということに、めちゃくちゃ驚かされたんですよね。
ウィトゲンシュタインが哲学で行ったのは、
明らかな、あからさまなまでのゲームチェンジです。
今までの哲学って無意味だったよね、
というと若干誤解を招きそうですが、
それくらいのインパクトを与えるような言葉を、
彼は論理哲学論考に残しているのです。
はっきり言って、狂っているのです。
今まで、先人たちがやってきたことって無意味だよね、
なんて言える、しかもそれを著作として残しているっていうのは、
もうまぎれもなくどこか狂っていなければできないことだと僕は思います。
同じようなことをやったのが、ニーチェです。
ニーチェも、当時ゴリゴリのキリスト教的な社会の中で、
キリスト教の欺瞞であったり、道徳の無意味性などを説いていましたが、
それもある意味狂っていないとできないことだと思います。
ニーチェも、生きていた時には全くと言っていいほど評価されなかったわけですが、
現在でも彼の著作は読み継がれていますし、
彼に影響を受けている人はたくさんいると思います。
優れた思想家って、そのときの社会に対する強烈な違和感を抱いていたり、
これっておかしくね?っていう疑問を強烈に持っているものです。
だからこそ、生きているときには評価されないことも多い。
長い時間を経ないと、その人の語っていることの意味がわからなかったりする。
それは狂っているからかもしれません。
でも狂うっていうのは、悪いことなのでしょうか。
狂うっていうのは、安定しない、っていうことでもあります。
今の現状に甘んじるのではなく、常に変革していく姿勢。
それと、狂っている人の文章って、オーラや熱量、鋭さが全然違う。
読者に刃物を突き立ててくるようなそんな厳しさを伴う文章もあったりします。
ウィトゲンシュタインもその一人なんだろうな、と思っていて、
今年はウィトゲンシュタインの著作を何冊か読んでみようかなーと思っています!
あとは狂った人の本をたくさん読もうと思いますw
そんな感じで、
優れた思想家はやっぱり狂っている、
という話でした。
「はじめてのウィトゲンシュタイン」はめっちゃ面白いのでおススメです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
では!